EBPM推進における産学官それぞれの役割
12月19日に開催されたRIETI(独立行政法人経済産業研究所)主催EBPMシンポジウム「エビデンスに基づく政策立案を推進するために」に参加した。
本シンポジウムにおいて、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社小林庸平主任研究員より発表「イギリスの独立機関によるEBPM」において、その中核組織であるWhat Works Centre(WWC) の概要が紹介された。
WWCの基本的な役割は、エビデンスを「つくる」「つたえる」「つかう」こととされている。
この役割の枠組みは、日本においても援用できるものと考えられる。
また、RIETIの矢野所長の発表においては、これまでの学術的な視点でのEBP研究に加え、政策に直結するEBPMの強化を図ることの必要性が訴えられている。
これは、医療分野における基礎と臨床のような違いとして例えられていたが、学術的に価値のあるEBP研究と、現場のニーズに応えうる実証研究にやや距離があるため、これらをつなぐハブ機能が必要であるということであった。
あわせて、EBPMを担うことのできる人材の育成が急務であることにも言及がされた。
これらの状況から、EBPMを推進していくためには、研究者と政策実務者において、次のような役割分担が求められるのではないかと考えられる。
研究者:
・最新の(=これまでにない)エビデンスをつくる
・どのようなエビデンスが存在するかを政策実務者につたえる
政策実務者:
・既存のエビデンスを政策形成につかう
・現場でつかえるエビデンスがどのようなものか研究者につたえる
一方、先述した通り、上記の研究者と政策実務者の間には、学術的価値と実証的価値というギャップがある。
こうしたギャップを埋めていく存在として、RIETIなどの関係機関や、シンクタンクをはじめとした民間組織において、次のような役割が期待される。
民間組織:
・研究者のつくったエビデンスを政策実務者に広くつたえる
・研究者が対応できないが、現場からはニーズがあるエビデンスをつくる
・現場のニーズによりつくられたエビデンスを政策実務者につたえる
・エビデンスをつかう政策実務者を増やす
特に、現在EBPMに関する取組は国内外において国レベルでの検討、研究が多くを占めており、地方自治体における知見の蓄積は不十分である。
当方においては、こうした状況を改善する一翼を担うため、民間組織の立場から地域におけるEBPMの推進・普及に取り組んでいきたい所存である。
とは言え、まだ知識不足の面も否めないため、年内にEBPMに関する概況の把握に努め、年明けには地方自治体においてどのような推進が考えられるか具体な検討を進めていきたい。
EBPM関連リンク集(2017/12/20)
「RESASハッカソン2017 in 京都」に参加しました
12月9〜10日の2日間「RESASハッカソン2017 in 京都 ~Web・IoTで創る京都のミライ~」に参加してきました。
RESASハッカソンって?
そもそもハッカソンってなんぞや?と言うと……
ハッカソン(英語: hackathon)とはソフトウェア開発分野のプログラマやグラフィックデザイナー、ユーザインタフェース設計者、プロジェクトマネージャらが集中的に作業をするソフトウェア関連プロジェクトのイベントである。(Wikipedia)
そして、RESASハッカソンは、RESAS-APIを活用して、あるいはRESASを用いて実施した分析結果を踏まえて、地域課題の解決や魅力発掘に資するアプリケーションを開発しよう!という趣旨のものです。
公式サイトはこちら↓
スケジュール
スケジュールはこんな感じでした。
Day1 12月9日(土)
09:30 開場、受付開始
10:00 開会挨拶
10:15 RESASの紹介
10:45 地域の課題紹介
11:45 アイデアソン
(12:00) ランチ
13:30 アイデアソン(企画検討時間)
14:30 ハック開始
17:00 ハック終了、中間発表
18:00 解散
Day2 12月10日(日)
09:30 開場、受付開始
10:00 開会挨拶
10:15 ハック開始
(12:00) ランチ
17:00 ハック終了/最終発表
18:00 閉会挨拶、終了
Day1 AM
初日の午前中はインプット&アイデア出し。
そもそもRESASってどんなふうに使えるの?という解説から、LINE BOTなど活用できるツールの紹介など。
その後、マンダラート(3×3のマス目が書かれた紙やホワイトボードを用意し、そのマスに思いついたことを埋めていく。発想するテーマを真ん中に書き、周りの8つのマスに関連するアイデアや思いつきを書いていくもの。以下参考)で、アイスブレイク。
Day1 PM
アタマを柔らかくして、お昼に一休みした後には、いよいよアプリケーションのアイデア出し。
3案を目標にアイデアを出しました。
僕のイチオシは「新規就農希望者のための移住先情報アプリ」。
アプリのユーザストーリーは
実家が農家でなく、またどこかの農業地に縁がない新規就農希望者にとって、どこで農業をするか?が重要な選択となる。
しかし、新規就農者に対する紹介サイト(全戸農地ナビなど)においても農地の探し方は紹介されていても、選び方は明らかにされていない。
そこで、今回RESASのデータからどこで農業をはじめるべきかの判断材料となる客観的情報を提供し、新規就農者が農業スタートアップを応援する。
といったものを想定していました。
RESASの紹介講義なう。暇なのでアイデアをまとめてみた。もっとこうしたらいいんじゃね?というコメントあったらください。また、もし新規就農をお考えの方などいらっしゃればお話聞かせてくだい。チームビルディング前なのでそもそもこれ作るかまだ未定ですが。#RESAS #RESASハッカソン京都 pic.twitter.com/oKKZjUiN99
— TODA@蒼梧藩国 (@todayuya) 2017年12月9日
投票では15票と比較的高得点だったのですが、実際のチームビルディングでは、あまり人気がなく……(おそらく、キャッチィさとユーモアが足りなかった、技術的な面白みがない、などが原因かな、と)。
というわけで、僕は「ナンパ支援ツール」×「京都 de リアルすごろく」の混成チームに入れていただくことに。チーム名は「京都 de すごろく」。
いろいろあって独身者のためのナンパ支援ツールをつくることになりました。#RESAS #RESASハッカソン京都
— TODA@蒼梧藩国 (@todayuya) 2017年12月9日
午後はどのように人と人の出会いを促すことのできるアプリケーションがよいのか、ということを喧々諤々の議論。
「"ナンパ"っていう言葉を使った瞬間に女性は参加しないのでは?」
「老若男女問わず誰でも使えるようにした方がよいのでは?」
「や、でもそうするとこのアプリの必要性ってなんなの?」 etc...
ターゲットについては悩みつつも、「旅先で、人と人とが自然に、素敵に出会うことのできる可能性を高めるようなアプリにしよう」というところでチームにて合意。
さらに、その仕組みとしてLINE BOTをベースに進行するゲームアプリをつくろう、という話になりました。
と、ある程度の方向性が見えたところでこの日は終了。
なお、夜は懇親会でおいしいウイスキーをいただきました。
「僕は今日ウヰスキーの素晴らしさを広めにきた」#RESAS #RESASハッカソン京都 pic.twitter.com/1mkzDi9v8Q
— TODA@蒼梧藩国 (@todayuya) 2017年12月9日
Day2 AM
2日目朝、昨晩の懇親会でみんな酒が入った状態で「いっそ男女の出会い目的を前面に押し出して突き抜けた方がいんじゃね?」という話になったので、あらためてターゲット設定を再検討。
JTB旅行者調査などから、以下のデータを得て
- 旅行に行きにくい要因として「家族、友人等と休日が重ならない」が2位
- 女性20代・30代の旅行動機として「思い出をつくるため」「日常生活から解放されるため」が1、2位
- 旅行スタイルの参加意向として「パワースポットを訪れる旅行」が高くなっている
「けっこう友だちと休みの日があわずに旅行に行けない人は多くて、旅先ではふだんとちがう思い出がほしい、という女性は多い。なので、旅先でちょっとした出会いのきっかけがある、ということに対してはニーズがありそう。さらにパワースポットを訪れるコンテンツの提案なら若い人が自然と集まりやすいのでは?」
という仮説を立てて考えていくことにしました。
そして、アプリ名が「KYOTO en-musubi」に決まり、ゲームシステムの内容も概ね固まりました。
アプリの紹介文を抜粋するとこんな感じです。
KYOTO en-musubiは、神さまのお使いコン助からのお願い事をクリアして、結び力を高めるゲームです。
お願い事は「伏見稲荷のおもかる石を持ち上げよう」「恋占いの石の間を歩こう」などさまざま。
こうしたお願い事をクリアしながらプレーヤー間の交流を促し、出会いのきっかけを提供します。
ようやく完成形がイメージできてきたところで、実際の開発にあたっては
と6人(7人チームでしたが1名病欠)を3班に分けて動きました。
僕はLINE BOTのプログラミングなどは技術的にできないため、主に世界観設計・ストーリーライティングを担当しました。
ゲームシステムとしては「依頼者からのクエストを解決していく」というものですが、その外装として
- 私も素敵な彼氏がほしい!というイワナガ姫(日本神話に登場するコノハナサクヤ姫の姉です)からお願いごと(クエスト)を頼まれる。
- そのメッセンジャーとして狐の御使い「コン助」(オリジナルキャラ)からのお願いごとを叶えてあげる。
といったストーリーを作りました(具体的には終盤に記述しているURLから実際のサイトをご覧ください)。
Day2 PM
そして開発、開発、開発。
「間に合わない!」「時間ねえ!」「動け!動けよぅ!!」という叫びがフロアにこだまします。
さらなる紆余曲折を経て出会いのきっかけをつくるゲームアプリをつくっているのですが、あと5時間とかマジか、って感じ。#RESAS #RESASハッカソン京都
— TODA@蒼梧藩国 (@todayuya) 2017年12月10日
ところが、僕は比較的早くライティングが終わってしまったので、プロダクト以外の概要説明プレゼン資料の作成を手伝ったり、エンジニア班のヘルプに入ったり、チームに不在のデザイナーをなんちゃって代行したり(WEBサイトのメインビジュアルやロゴを作ったり)してました。
最終的にはエンジニア班の後ろで応援する係に。
開発終了!そしてデモプレゼン
そして17時00分。
7人の力でなんとか完成とは言えないものの、動くプロダクトができあがりました。
もうやりきった。やりきったよ俺たちは。お互いの健闘を讃えて握手。
その喜びを分かち合うのも束の間、すぐにデモプレゼンへ。
開発終了!デモのプレゼンが始まりました!#RESAS #RESASハッカソン京都 pic.twitter.com/zrLgZJgqOn
— TODA@蒼梧藩国 (@todayuya) 2017年12月10日
1チーム5分でデモを発表し、審査員からさまざまなコメント、質問が飛びます。
我々のチームには例えばこんな質問が。
審査員「このアプリを使って既婚者が不倫することもできるのではないかと思うが、その予防策は考えているか」
— TODA@蒼梧藩国 (@todayuya) 2017年12月10日
僕「恋心は法律で縛れるものではないので防ぐ手立てはありません」#RESAS #RESASハッカソン京都
プロダクト紹介:KYOTO en-musubi
そしてこちらが我々の開発したプロダクト「KYOTO en-musubi」になります。
まだ実装されていない機能だらけですが、MVP(Minimum Viable Product)としては一応試せると思いますので、ぜひご覧ください。
この仕組み自体は、他の地域でも流用することができ、また発展性の高い(つくりこみのできる)プロダクトなのではないかと思います。
このアプリケーションを事業化しよう、という話にはなっていませんが、ご興味・ご関心のある方はお気軽にご連絡ください(可能な限り開発メンバーにおつなぎさせていただきます)。
ドキドキの審査発表
全チームのデモが終わり、少しの休憩を挟んで緊張の審査発表へ。
まずは企業特別賞(LINE賞、ドコモ賞、京都銀行賞)が発表されました。
そして最後は最優秀賞の発表……!
ドラムがないので、みんなで手でテーブルをドコドコ叩きながらの発表でした。
「最優秀賞は……京都 de すごろく!」
ということで、我々でした。ありがとうございます。
プロダクト名でばかり話していて、チーム名を忘れかけていたので一瞬わかりませんでした。
いや、でも嬉しいですね。ありがとうございます。
RESASハッカソンを終えて
元々僕はEvidenced Based Policy Making に関心があり、RESASの提供開始当初からわりと遊びながらデータ分析をしてきました。
また、自社事業として、今後RESASを活用した新規事業をはじめる予定なので、それもあって今回のハッカソンに応募しました。
当初自分の持ち込んだアイデアは採用に至らず、正直ちょっと凹んでいたのですが(結構考えてきたので)、そんなことは関係なく、はじめて企画から実装までして、動くプロダクトをみんなでつくることができた、というのはとてもよい経験になりました。
なによりチームメンバーそれぞれ得意分野がちがって、みんなの力でプロジェクトを進めていく、ということ自体が本当に楽しかったです。
とってもとっても密度の高い、エネルギッシュな2日間でした。
楽しく進行してくださったチームラボの床並さん、LINE BOT開発でとてもお世話になったLINEの立花さん、おいしいウイスキーを振る舞ってくださった羽山さん、code for osakaの東さん、井上さん、code for kyotoの太田垣さん、そして会場ご提供や運営協力いただいたオムロンのみなさま、そして誰より2日間を一緒に駆け抜けたチームメンバーの三上さん、加藤さん、植木さん、仲野さん、小川さん、古川さん、本当にありがとうございました!!
と、めでたしめでたし……ではありますが、実は、これで終わりではないのです……。
そう、このハッカソンと関連して、RESASでは12月20日〆切のアプリコンテストが開催中なのです。
ということで、僕たち開発チームのSlackチャンネルが解散になるのはまだしばらく後になりそうです。
「まだだ、まだ終わらんよ!」
おまけ
ハッピをつくるRESASハッピソンも同時開催されていました。
ペッパーくんがプレゼンがんばってくれました。
ペッパーによるプレゼン。#RESAS #RESASハッカソン京都 #RESASハッピソン pic.twitter.com/IH9z2vBtWu
— TODA@蒼梧藩国 (@todayuya) 2017年12月10日
移民政策学会冬季大会に参加してきました
昨日12月2日に南山大学で開催された移民政策学会冬季大会に参加してきました。
自由報告を2件、高校生の発表を1件、シンポジウムを拝聴。
論文を一本執筆することを2018年の目標の一つとして設定しようと考えているのですが、その刺激になりました。
テーマについては未だ検討中。
そもそも大きくドメインとして、移民政策に関するものにするか、エビデンスド・ポリシー・メイキングに関するものにするか、というところから未定です。
2014年度の移民政策学会年次大会では「留学⽣はどこで就職しているか?〜留学⽣の地域別定着要因の研究に向けた基礎統計分析〜」という題で自由報告を行ったのですが、これもその後放置してしまっています……。(以下抄録URL)
http://iminseisaku.org/top/conference/doc/140511_toda.pdf
これも深めてまとめておきたいと思う一方、こだわりすぎる必要もないのかな、と。
ただ、いずれにせよ、今の身分では企業に対するアンケート調査、インタビュー調査などはやや実施しにくいところがあるため、文献及び統計資料の分析を中心に据えようかと考えています。
とりあえず年内に少し先行研究のサーベイに着手します。
また研究者の諸先輩方にアドバイスなどいただけましたら幸いです。
新規事業をはじめます:テーマはEvidence-Based Policy Makingの普及
月末ですね。
あ、今月Blog1記事も書いてないや、と思い出し。
最低月1くらいは記録を残す意味でも更新していきたいところ。
実は10月中旬に政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策研究センター専門職ポストに空きが生じたらしいというのを知り応募していたのですが、11月初旬にあいにく不採用通知が届きました。
「副業として会社経営を続ける」というのは前例がないらしく。
いや、それだけが原因かは知らんのですが。
しかし、これをきっかけに科学的根拠に基づく政策立案(EBPM:Evidence-Based Policy Making)についてふつふつと興味関心が沸くようになりました。
シンクタンク研究員だった頃から定量データに基づく政策立案と評価のサイクルを回すことの重要性は感じていたのですが、日々の業務の中ではなかなか個別に検討したり具体化することは難しく、特に新たな取組やムーブメントを起こすことは叶いませんでした。
しかし、今なら事業としてEBPMに取り組むこともできるかもしれないなあ、と思い、ここ1カ月ほど新規事業としてプランを考えておりました。
当初は、行政内に眠っている資料を掘り起こして、「情報を使えるデータに加工してアーカイヴ化する」という事業を考えておったのですが、市役所の友人数名に話を聞くと、それはなかなかハードル高めとのこと。
で、まずはすでに公表されている統計ベースでもよいので、地域経済のデータだけでも整理して提供する、といったプランがよいのでは、という話に落ち着きつつあります。
というわけで、その事業企画を取りまとめ、ついでにメインバンクの静岡銀行さんからお声掛けいただいたので、「しずぎん起業家大賞」というビジネスコンテストに応募してみました。
ただ、スケジュールを見ると受賞発表が来年3月と大変気の長い話であるのと、受賞しようがしまいがいずれにせよプロダクト開発とマーケットリサーチはする必要があるので、粛々と進めていく予定です。
もう2017年もおわりではありますが、年内にプロダクトのβ版は作り上げたいと思います。
今年初めに立てた2017年計画の目標はもうびっくりするくらい達成できていないというか御破算になっちゃったものばかりなのですが、この1月で今回の新規事業のプロダクト開発までできたら、まあまあよい1年だった、として締め括ってよいのではないでしょうか。
そして、日本茶事業、日本語オンラインレッスン事業と起業して2年半で颯爽と2つの事業をこかしてきたので、三度目の正直として今回の事業は成功させたい、とわりと本気で考えております。
応援どうぞよろしくお願いいたします。
起業するとは経営者としての人生を選択するということである
他人の失敗から学びなさい。あなたがすべての失敗を経験できるほど人生は長くないのだから。
和波俊久『ビジネスモデル症候群 なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?』(技術評論社,2017)を読んだ。
本書の要点は以下の通り。
- バイアスのかかった仮説検証、直感に依拠したアイデア、経営の度外視、手段の目的化、失敗のループといった"ビジネスモデル症候群"にかかることで、多くの起業家が失敗している
- 起業を成功させるための第一要因はビジネスモデルではない
- ビジネスモデル崇拝から脱却し、「経営」と「人生選択」という起業の本質に立ち返る必要がある
自分自身、創業して2年と少しになる起業家(一応)だが、本書の言う失敗のループにまさに嵌っている。
これまでの2年間に日本茶Eコマース、日本語オンラインレッスンという2つの自社事業を立ち上げているが、いずれも成功したとは言い難い状況で頓挫した。
どうしてもビジネスモデルをその原因だと決めつけ、また新しいビジネスモデルのアイデアを創らないと……という考えに囚われていたが、必ずしもそれだけではないのかもしれないな、とその考えを改めることができた。
むしろ本書の「起業とは経営を続けることである」という観点から言えば、生き残ってはいるわけなので、まだ失敗したとは言わなくてよいのかもしれない。
筆者は「起業家の1年目の仕事とは、『やりたいこと・できること・求められることの3つを一致させるための仕組み』を構築することだ」(p.178)と述べている。
すでに3年目で未だにこれらができていないのは甚だ問題だが、こうした仕組みを構築し、失敗のループから抜けられるよう起業家としてのReスタートを切りたい所存である。
逡巡
今日は大学時代からの親友の結婚式だった。
本当におめでとう。
披露宴と、その後に十年来の親友たちと呑んで触発されたので、少し青臭い話をする。
今にして思えば随分と傲慢だった。
「自分は何者にもなれるし、何でもできる」と考えていた学生の頃。
就職活動をする時に考えていたことは「自分の才能を社会のどこに配置するのが世の中にとって最適なのか」ということだった。
卒業後、民間シンクタンクに入社した僕は5年の歳月をそこで過ごした。
幸いシンクタンクの仕事は僕に向いていたようで、有り体に言って優秀な若手研究員だったと思う。
会社の看板と資金をフルに活用し、新しいプロジェクトも立ち上げた。
その時、僕は会社の力でできたことを自分の力と勘違いしてしまった。
もっと自分の力と時間を自由に使える環境に身を置いた方が社会のためになるのではないかと考えた。
2年前の4月いっぱいで退職し、自分の会社を興した。
しかし、起業してからというもの、たくさんの、本当にたくさんの失敗を積み重ねている。
果たして起業という選択肢が本当に正しかったのか、まったく自信がない。
今は、有り難いことに、たくさんの人に助けられながら、目をかけてもらいながら、その支援のおかげで首をくくらずに済んでいる。
けれど、起業してからの2年強、胸を張って誇れるような実績を一つもつくれていない。
根拠のない自信は時限のあるものだったか、いつまでも根拠がないままでは苦しく、揺らぎ始めている。
自営業、起業家というのも一つの働き方でしかなく、そのこと自体に価値があるわけではない。
自分には経営者は不向きで、どこかの会社の専門職として生きる方が合っているのではないか。
その方が自分の能力の活かし方として、社会のためにもなるのではないか。
二度目の決算を終えてからここ最近、そんなことをぐるぐると考えている。
30歳を過ぎ、友も皆それぞれの道を進んでいる。
もちろん僕の知らない迷いもあっただろう。一人で耐える夜もあったろう。
それでも彼らはめざすべき道を一歩一歩、着実に歩んでいる。
そんな友に恥じぬ人生を歩みたい。
自分に何がどこまでできるのか。
壁にぶつかるまで走ってみないことには、自分の枠がどこにあるのかすらわからない。
もう僕も来月には31歳になる。
そろそろ見極めねばらならない時期か。