地域経済分析システムRESAS(リーサス)を使ってみた
1.地域経済分析システムRESAS(リーサス)がリリース
内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)及び経済産業省より、地域経済分析システム「RESAS (Regional Economy and Society Analyzing System)」がリリースされました。
「地域経済分析システム(RESAS(リーサス))」の提供を開始しました(METI/経済産業省)
地方自治体が地方版総合戦略を策定する際に行うデータ分析を支援する目的で設計されたシステムとのこと。
ものはためし、ということで早速使ってみました。
オープニング画面はこんな感じ。結構オシャレですね。
背景のアニメーションには、「このシステムはただの打ち上げ花火では終わらせない!」という国の熱い想いが込められているとか(違
一般ユーザ向けには上記の「人口マップ」「観光マップ」「自治体比較マップ」が公開されています(企業間取引等の情報を見ることができる「産業マップ」は自治体担当職員のみ利用可能のようです)。
2.実際にデータを見える化してみた
RESASではさまざまなデータを見ることができます。
例えば、先ほどの「人口マップ」をクリックすれば、人口増減や人口構成、将来人口推計などをマップ化、グラフ化してくれます。
地域についても全国、都道府県、市町村など、任意の範囲を選んで表示できます。
百聞は一見に如かず、ということで、静岡県掛川市を例にとってさまざまなデータを可視化してみたいと思います。
はじめに、人口マップのうち、将来人口推計をグラフ化してみました。
2050年には2010年比で若年・中年は4割減、老年は3割増することがわかります。
わかってはいたことですが、グラフ化されるとより危機感を覚えますね。
続いては、観光マップから「From-to分析」。
掛川市に滞在するひとはどこから来ている人々なのか、ということがわかるデータです。
まずは花火図から。
全然わかりませんね。「全国各地から来ている」「近隣地域からが多い」ということがぼんやりわかるといったところでしょうか。
同じデータをグラフで見てみましょう。
こちらの方がわかりやすいですね。
まず、掛川市の滞在人口は合計:514,200人となっており、人口に対する滞在人口率4.46倍となっています。人口の4倍の人間が掛川に2時間以上は滞在している、ということですね(2014年・休日)。
Fromについて確認すると、当然地元の掛川市民が最も多く、ついで袋井市、菊川市といった近隣市が続きます。
県外では愛知県豊橋市が最も多いようです。上位の市町村は愛知県下の市が多く、東京よりも愛知との交流が盛んといったことがデータからも読み取れます(地元民の体感としてもそんな感じです)。
さて、お次は産業マップから事業所数の比較をしてみましょう。
次のグラフは掛川市を中心に、隣接する市町の「織物・衣服・身の回り品小売業」の事業所数を比較したものです。
生活の基本となる小売業としてこちらの小売業をチョイスしましたが、掛川市は近隣市の中で最も事業所数が多くなっています。
こちらのデータと先程のFrom-to分析を組み合わせると、
といった想像ができたりします(あくまで仮説です。このデータからそこまでは言えません)。
最後に、Blog主題である起業に関連するデータとして、産業マップから「創業比率」を見てみましょう。
次のグラフは掛川市の創業比率の推移を示したグラフです(比較対象として浜松市も入れています)。
近年、掛川市は全国平均、県平均、浜松市のいずれと比べても低くなっています。
というか浜松市でも全国平均より低いんですね…。やらまいか精神はいずこ。
ちなみにランキングで見ると掛川市は全国725位。うーん、微妙。
新規開設事業所の多くは飲食店なので、駅前の呑み屋街の有無だけでも大分変わりますが、それでもまちの活気という面では心配ですね。
…いや、そうでもないか。掛川には僕がいますからね。戻り次第、起業家仲間も増やしていきたいと思います。
3.使ってみての感想&改善が期待される点
分析屋としては、触っていてとても楽しいシステムだと感じました。
まったく手間暇かからずさくさくグラフを作ってくれるので、ざっくり概況をつかむのにとても役立ちます。
ただ、最も分析しがいがありそうな「産業マップ」の企業間取引等に関するデータは公開されていないため、物足りないのは否めません。企業名は秘匿する、研究目的に限るなど、条件付きでもかまわないので使わせてほしいところ。
とりあえずの改善点を挙げるならば以下の4点でしょうか。
①ひとつの自治体に着目した産業構造分析
産業ごとの自治体間比較はできるのですが、あるひとつの自治体の産業構造を分析することができません。掛川市なら掛川市を選択し、掛川市の産業構造などが一覧できるとより便利ですね。
②小分類の表示
表示できるデータが中分類までのため、業種別の細かなデータ分析ができません。統計資料としてないわけではないので、ぜひ網羅してほしいところです。
③産業分類の組み換え
上記と類似しますが、産業分類の組み換えができるとなおよいですね。
例えば、大分類「卸売,小売」をブレイクダウンすると「飲食料品小売業」となってしまうため、「小売」といった区分でデータを見ることができません。さらに、「出版」や「広告」、「ソフトウェア」などを組み合わせて「コンテンツ産業」とするなど、独自のカテゴライズができれば分析の幅が広がりそうです。
④表示データのダウンロード
例えば、創業比率なら、全国市町村のCSVデータをダウンロードすることができます。これはこれでとても重宝するのですが、表示しているデータやグラフをそのまま作ることのできるExcelファイルをダウンロードできるとなお便利ですね(さすがによくばりすぎ?)。
4.総括:企業に活用の道はあるか?
研究員としてはいざしらず、一企業としては、それほど活用の術はないかもしれません。
進出予定地域の人口構成や経済概況等を把握するなど、マーケティング・リサーチのはじめの一歩、基礎資料として活用するといった程度でしょうか。
ただ、家計調査などの現存する有用な統計データが今後も追加されていけば、またさまざまな分析が可能になるかもしれません。
今後、企業にとっても活用しやすいデータ整備やシステム改善が進むことが期待されます。
RESASに触れてみて、より多種多様な統計資料、詳細なデータを使ってみたいという方はぜひ政府統計ポータルサイトe-Statをご覧ください。
日本政府の公表している大部分の統計資料はこちらで探すことができます。
また、起業家の方にとっては、RESASにリンクが掲載されているミラサポの施策マップの方がよりダイレクトに役立つかもしれません(全国各地域の事業支援施策を一括で検索することができます)。
改善点なども多数挙げましたが、総じてすばらしいシステムだと思いました。データを簡単に見える化することができ、多くの人にとって取っ付きやすいもになっているのではないかと思います。
RESASの普及により、多くの人がデータを活用して地域を考えるきっかけになるとよいですね。
(資料)画像はいずれも「RESAS -地域経済分析システム-」より転載
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RESASをはじめとしたデータを活用したマーケティングに関するアドバイス、研修、コンサルティングを承っています。ご相談は下記アドレスまでお気軽にどうぞ。
(2015/10/31追記)
地方創生をテーマとしたシンポジウムを2015年12月19日(土)掛川市にて開催いたします。ご関心のある方はぜひ以下の記事をご覧ください。