僕が創業補助金をオススメしない3つの理由
さて、平成27年度も創業補助金(正式名称:創業・第二創業促進補助金)の公募がはじまりました。
公募期間は4月13日〜5月8日までですので、申請予定の方はその準備に追われているかもしれません。
今回の創業補助金の対象となるのは
①平成27年3月2日以降に創業する者 かつ
②産業競争力強化法に基づく認定市町村で創業する者 となっています。
※その他に細かな条件規定がありますので、詳細は募集要項をご覧ください。
僕が起業するのは5月以降であり、また拠点を置くことになる静岡県掛川市も、つい先日認定市町村になったので、対象条件は満たしています。
しかし、僕はこの補助金を申請する予定はありませんし、これから創業される方にもオススメできません。
その理由を3つに整理してご紹介したいと思います。
1.申請・報告・確定検査にかかる事務コスト
補助金交付までのステップとして、応募→採択→交付申請→完了報告→確定検査→請求といったさまざまな事務手続きが生じます。
これに必要な工数を大雑把に見積もると、事務文書作成に慣れていることを前提としても、計8日(申請3日、報告2日、検査対応3日)程度を見込んでおく必要があります。おそらくこれらの対応は創業者自身が行わなければならない部分が多いと思いますが、創業者の投入工数8日分というのはそれだけでも10〜40万円程度のコストに相当するのではないでしょうか。
また、国の補助金ですので当然ではありますが、厳正に適切な運用が求められます。そのため、事業完了後には「確定検査」というものがあります。
僕も国から受注した案件の確定検査に対応した経験もありますが、経費のすべてについて証跡を揃える必要があり、なかなかに骨の折れる作業でした。少なくとも丸二日間はかかります。慣れていない方であればもっとかかるでしょう。
補助金の利用は、こうした本業とは全く関係しない事務コストが大きくかかるものであるということを認識しておく必要があります。
2.収益が生じた場合に返納の可能性あり
めでたく補助事業として採択され、補助金の交付を受けた場合、事業完了後も5年間にわたり補助事業の事業化報告、収益状況報告が要求されます。
補助金の効果を測る意味では必要なことだと理解できますが、事業者視点からはこれもやはり事務コストになります。
さらに、その収益状況によっては、補助金を返納することになる可能性があります。
-----納付金額の算出式-----
【 基準納付額:(B-C)×A÷D 】
上記の式により算出された額から前年度までに収益納付した額を差し引き、正の値であった場合には、収益納付が発生します。
B:補助事業に係る収益額(補助事業に係る営業損益等(売上高-製造原価-販売管理費等) の各年度の累計)
C:控除額(補助対象経費)
D:補助事業に係る支出額(本報告の事業年度までに補助事業に係る費用として支出された 全ての経費(補助事業終了後に発生した経費を含む。))
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http://sogyo-hojo.jp/27th/docs/sogyosokushin_bosyu_youkou.pdf
例えば、補助金交付が200万円(A)、5年間の収益が600万円(B)、控除額が300万円(C)、支出合計が1,000万円(D)の場合、60万円を返納する必要があります。
前述の通り、かなりの事務コストをかけながら、最終的には返納することになる可能性があるというのは結構なリスクですね。
3.補助金による事業の本質的な判断のひずみ
補助金は、期間や対象費目が限定されており、自由に使えるというものではありません。補助金の性質上、それは仕方がないことと言えますが、事業の側面から見るとさまざまなマイナス要因となる可能性があります。
例えば、交付決定があるまで事業契約しないといったスケジュール変更、2/3の補助が見込まれることによる過度の経費利用など、事業経営を進めていく際に、本来事業とは関係しない要素が入りこみ、判断が変わってくることになります。
また、日本には創業補助金以外にもさまざまな補助金があります。一度補助金を利用することを覚えてしまうと、「どのように本業で利益を上げていくか?」という本質的な部分ではなく、「どんな補助金が使えそうか?」といった思考に陥りやすくなります。
これは、商店街をはじめとした地域活性化に取り組む木下斉氏も指摘されていますね。
(資料)「補助金依存の悪循環」(No.1003) | 経営からの地域再生・都市再生 [木下斉]
以上、創業補助金の利用をオススメしない3つの理由を整理しました。
ただ、ディスってばかりでもあれですので、よいところも書いておくと、応募資格の一つに「金融機関からの外部資金による調達が十分見込める事業であること」が挙げられていることですね。これをきっかけとして地域の金融機関とつながりができ、将来的な融資につながればそれは大きな前進だと思います(それならはじめから融資を受ける、ということでもよいのではないか、とも思いますが)。
これから起業しようという方の中にもさまざまなお考えの方がいらっしゃると思いますが、そもそもはじめから国から補助金をいただいて…というのはなんだかちがうんじゃない?というような気がしています。
応援してもらえるのはとてもありがたいお話です。が、必要なのは補助金ではなく、お客様であり、融資・出資者であり、よき仕事仲間であり、きちんと成り立つ事業モデルです。
というわけで、自分の事業とは関係ないこの記事にずいぶん時間を使っていまいましたが、本日も着々と準備を進めます。