後世への最大遺物

2015年に静岡県掛川市で起業した一人社長のBlogです。日々の雑感や経営の話など。

イシューからはじめるために

こんばんは、戸田です。

久しぶりのブログ更新になりました。

 

ここ数ヶ月、これから取り組む事業のアイデアをあーでもないこーでもないと考えている日々です。

とりあえずおもしろそうなものからやってみる、というのも一つの方法だとは思うのですが、過去に二度事業としては(ほぼ)失敗しているので、今回はきちんと感が手からにしようかな、と。

と言いつつ、「採算はさておきとりあえずやってみる」プロジェクトも一つ始める予定ですが。

 

安宅和人『イシューからはじめよ』では、イシュー度と解の質がともに高い仕事を「バリューのある仕事」として定義しています。

イシューというのは少しニュアンスに誤差はありますが、課題・問題のようなものです。

要は課題の質が高く、重要なものでなければ、それに対する解決策がいかに素晴らしくともバリューはないよね、という話です。

ついつい、「AIを使えばこんなことができるのでは?」「VRならこんなおもしろいものが」というソリューションから考えてしまいがちですが、まずはイシューを高めることが始めていきたいと思います。

 

そして、イシューとしては、いろいろ考えたのですが「日本企業のホワイトカラーの生産性を高める」を中心に据えたいと考えています。

このイシューに対して、テクノロジーと教育・研修を活かしたソリューションを提供していきたいと思います。

 

まだふわふわしていますが、今後は、このイシューとしてお金を払えるほどに切実に意識している企業へのフィールドワークをしていきたいと思います。

どの企業も考えているのではないかな、と思いますが、特にイメージしているのは事務仕事があまりIT化されていない地方の中小企業など。

その中で、具体的なソリューションのアイデアは複数あるので、その絞り込みと磨き上げをしていきます。

 

というわけで、「切実に生産性を高めたい」という企業様がありましたらぜひお話お聞かせください。

どうぞよろしくお願いいたします。

犀の角のようにただ独り歩め

「今年はちゃんと働こう」と決めて早2カ月。

おかげさまで仕事の受注も増え、忙しい毎日を送らせていただいています。

 

しかし、目の前の仕事への対応に追われつつあり、未来への投資がなかなかできていないのも正直なところ。

年初に一度計画は立てているのですが、状況は刻一刻と変化し、すでに現状と乖離している部分もあります。

そこで、今日は久しぶりに落ち着いて目標と計画を立て直そうかと。

 

で、一日ゆっくり考えていたのですが、めざすゴールとその実現に向けた目標が全然リンクできていないなあ……ということを改めて認識しました。

 

もちろん「4月から本格的に新しいビジネスの営業を開始できるよう、3月中にその準備としてPRツールを制作しよう」みたいな目標と計画は立てられます。

しかし、それより上位、最上位のゴールとそれを達成するための道筋が見えていないのです。

 

何度か書いていますが、僕のめざしているゴールは、移民・難民の子どもたちが不自由なく暮らし大人になって活躍できる国をつくることです。

そのためにシンクタンクへ入社して政策研究に携わりました。

退職後は、移民の方が活躍するモデルケースとなる事業をつくり、稼いだ金で移民の子どもへの教育へと投資する……そのために起業しました。

このゴールに結びつく仕事ができているのか、というと甚だ疑問です。

もちろんまずは会社を継続させるためにしっかりと稼ぐことが大切なのですが、それだけに終始するなら自分で会社をつくった意味がない。

 

ただ食べていくだけなら、それはそんなに難しいことじゃありません。

ただ、これからもめざす世界があるなら、これからも初志を貫く覚悟を持つなら、もっともっと考え抜いて、行動し続けていかなければならないのでしょう。

 

牛のように遅い歩みではありますが、これからも悩み迷いながらも前に進んでいきたいと思います。

 

犀の角のように、ただ独り歩め。

「RESASハッカソン2017 in 京都」に参加しました

12月9〜10日の2日間「RESASハッカソン2017 in 京都 ~Web・IoTで創る京都のミライ~」に参加してきました。 

RESASハッカソンって?

そもそもハッカソンってなんぞや?と言うと……

ハッカソン(英語: hackathon)とはソフトウェア開発分野のプログラマやグラフィックデザイナー、ユーザインタフェース設計者、プロジェクトマネージャらが集中的に作業をするソフトウェア関連プロジェクトのイベントである。(Wikipedia

ハッカソン - Wikipedia

 

そして、RESASハッカソンは、RESAS-APIを活用して、あるいはRESASを用いて実施した分析結果を踏まえて、地域課題の解決や魅力発掘に資するアプリケーションを開発しよう!という趣旨のものです。

 

公式サイトはこちら↓

opendata.resas-portal.go.jp

  

スケジュール

スケジュールはこんな感じでした。

Day1 12月9日(土)
09:30 開場、受付開始
10:00 開会挨拶
10:15 RESASの紹介
10:45 地域の課題紹介
11:45 アイデアソン
(12:00) ランチ
13:30 アイデアソン(企画検討時間)
14:30 ハック開始
17:00 ハック終了、中間発表
18:00 解散

 

Day2 12月10日(日)
09:30 開場、受付開始
10:00 開会挨拶
10:15 ハック開始
(12:00) ランチ
17:00 ハック終了/最終発表 
18:00 閉会挨拶、終了

 

Day1 AM

初日の午前中はインプット&アイデア出し。

そもそもRESASってどんなふうに使えるの?という解説から、LINE BOTなど活用できるツールの紹介など。

その後、マンダラート(3×3のマス目が書かれた紙やホワイトボードを用意し、そのマスに思いついたことを埋めていく。発想するテーマを真ん中に書き、周りの8つのマスに関連するアイデアや思いつきを書いていくもの。以下参考)で、アイスブレイク。

 

creive.me

 

Day1 PM

アタマを柔らかくして、お昼に一休みした後には、いよいよアプリケーションのアイデア出し。

3案を目標にアイデアを出しました。

僕のイチオシは「新規就農希望者のための移住先情報アプリ」。

アプリのユーザストーリーは

実家が農家でなく、またどこかの農業地に縁がない新規就農希望者にとって、どこで農業をするか?が重要な選択となる。

しかし、新規就農者に対する紹介サイト(全戸農地ナビなど)においても農地の探し方は紹介されていても、選び方は明らかにされていない。

そこで、今回RESASのデータからどこで農業をはじめるべきかの判断材料となる客観的情報を提供し、新規就農者が農業スタートアップを応援する。 

といったものを想定していました。

 

 

投票では15票と比較的高得点だったのですが、実際のチームビルディングでは、あまり人気がなく……(おそらく、キャッチィさとユーモアが足りなかった、技術的な面白みがない、などが原因かな、と)。

 

というわけで、僕は「ナンパ支援ツール」×「京都 de リアルすごろく」の混成チームに入れていただくことに。チーム名は「京都 de すごろく」。

 

午後はどのように人と人の出会いを促すことのできるアプリケーションがよいのか、ということを喧々諤々の議論。

 

「"ナンパ"っていう言葉を使った瞬間に女性は参加しないのでは?」

「老若男女問わず誰でも使えるようにした方がよいのでは?」

「や、でもそうするとこのアプリの必要性ってなんなの?」 etc...

 

ターゲットについては悩みつつも、「旅先で、人と人とが自然に、素敵に出会うことのできる可能性を高めるようなアプリにしよう」というところでチームにて合意。

さらに、その仕組みとしてLINE BOTをベースに進行するゲームアプリをつくろう、という話になりました。

 

と、ある程度の方向性が見えたところでこの日は終了。

 

なお、夜は懇親会でおいしいウイスキーをいただきました。

 

Day2 AM

2日目朝、昨晩の懇親会でみんな酒が入った状態で「いっそ男女の出会い目的を前面に押し出して突き抜けた方がいんじゃね?」という話になったので、あらためてターゲット設定を再検討。

JTB旅行者調査などから、以下のデータを得て

  • 旅行に行きにくい要因として「家族、友人等と休日が重ならない」が2位
  • 女性20代・30代の旅行動機として「思い出をつくるため」「日常生活から解放されるため」が1、2位
  • 旅行スタイルの参加意向として「パワースポットを訪れる旅行」が高くなっている

「けっこう友だちと休みの日があわずに旅行に行けない人は多くて、旅先ではふだんとちがう思い出がほしい、という女性は多い。なので、旅先でちょっとした出会いのきっかけがある、ということに対してはニーズがありそう。さらにパワースポットを訪れるコンテンツの提案なら若い人が自然と集まりやすいのでは?」

という仮説を立てて考えていくことにしました。

 

そして、アプリ名が「KYOTO en-musubi」に決まり、ゲームシステムの内容も概ね固まりました。

アプリの紹介文を抜粋するとこんな感じです。

KYOTO en-musubiは、神さまのお使いコン助からのお願い事をクリアして、結び力を高めるゲームです。
お願い事は「伏見稲荷のおもかる石を持ち上げよう」「恋占いの石の間を歩こう」などさまざま。
こうしたお願い事をクリアしながらプレーヤー間の交流を促し、出会いのきっかけを提供します。 

 

ようやく完成形がイメージできてきたところで、実際の開発にあたっては

  • LINE BOTのペーパープロト・UX作成
  • LINE BOTをベースとしたゲームアプリ開発&ランディングページ制作
  • ゲームの世界観・ストーリー設計&具体的なゲームクエストの作成

と6人(7人チームでしたが1名病欠)を3班に分けて動きました。

 

僕はLINE BOTのプログラミングなどは技術的にできないため、主に世界観設計・ストーリーライティングを担当しました。

 

ゲームシステムとしては「依頼者からのクエストを解決していく」というものですが、その外装として

  • 私も素敵な彼氏がほしい!というイワナガ姫(日本神話に登場するコノハナサクヤ姫の姉です)からお願いごと(クエスト)を頼まれる。
  • そのメッセンジャーとして狐の御使い「コン助」(オリジナルキャラ)からのお願いごとを叶えてあげる。

といったストーリーを作りました(具体的には終盤に記述しているURLから実際のサイトをご覧ください)。 

 

Day2 PM

そして開発、開発、開発。

「間に合わない!」「時間ねえ!」「動け!動けよぅ!!」という叫びがフロアにこだまします。

 

 

ところが、僕は比較的早くライティングが終わってしまったので、プロダクト以外の概要説明プレゼン資料の作成を手伝ったり、エンジニア班のヘルプに入ったり、チームに不在のデザイナーをなんちゃって代行したり(WEBサイトのメインビジュアルやロゴを作ったり)してました。

最終的にはエンジニア班の後ろで応援する係に。

 

開発終了!そしてデモプレゼン

そして17時00分。

7人の力でなんとか完成とは言えないものの、動くプロダクトができあがりました。

 

もうやりきった。やりきったよ俺たちは。お互いの健闘を讃えて握手。

 

その喜びを分かち合うのも束の間、すぐにデモプレゼンへ。

 

 

1チーム5分でデモを発表し、審査員からさまざまなコメント、質問が飛びます。

我々のチームには例えばこんな質問が。

 

プロダクト紹介:KYOTO en-musubi

そしてこちらが我々の開発したプロダクト「KYOTO en-musubi」になります。

まだ実装されていない機能だらけですが、MVP(Minimum Viable Product)としては一応試せると思いますので、ぜひご覧ください。

 

KYOTO en-musubi

 

この仕組み自体は、他の地域でも流用することができ、また発展性の高い(つくりこみのできる)プロダクトなのではないかと思います。

このアプリケーションを事業化しよう、という話にはなっていませんが、ご興味・ご関心のある方はお気軽にご連絡ください(可能な限り開発メンバーにおつなぎさせていただきます)。

 

ドキドキの審査発表

全チームのデモが終わり、少しの休憩を挟んで緊張の審査発表へ。

まずは企業特別賞(LINE賞、ドコモ賞、京都銀行賞)が発表されました。

そして最後は最優秀賞の発表……!

ドラムがないので、みんなで手でテーブルをドコドコ叩きながらの発表でした。

「最優秀賞は……京都 de すごろく!」

 

ということで、我々でした。ありがとうございます。

プロダクト名でばかり話していて、チーム名を忘れかけていたので一瞬わかりませんでした。

いや、でも嬉しいですね。ありがとうございます。

  

RESASハッカソンを終えて

元々僕はEvidenced Based Policy Making に関心があり、RESASの提供開始当初からわりと遊びながらデータ分析をしてきました。

 

todayuya.hateblo.jp

 

また、自社事業として、今後RESASを活用した新規事業をはじめる予定なので、それもあって今回のハッカソンに応募しました。

 

todayuya.hateblo.jp

 

当初自分の持ち込んだアイデアは採用に至らず、正直ちょっと凹んでいたのですが(結構考えてきたので)、そんなことは関係なく、はじめて企画から実装までして、動くプロダクトをみんなでつくることができた、というのはとてもよい経験になりました。

なによりチームメンバーそれぞれ得意分野がちがって、みんなの力でプロジェクトを進めていく、ということ自体が本当に楽しかったです。

とってもとっても密度の高い、エネルギッシュな2日間でした。

 

楽しく進行してくださったチームラボの床並さん、LINE BOT開発でとてもお世話になったLINEの立花さん、おいしいウイスキーを振る舞ってくださった羽山さん、code for osakaの東さん、井上さん、code for kyotoの太田垣さん、そして会場ご提供や運営協力いただいたオムロンのみなさま、そして誰より2日間を一緒に駆け抜けたチームメンバーの三上さん、加藤さん、植木さん、仲野さん、小川さん、古川さん、本当にありがとうございました!!

 

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と、めでたしめでたし……ではありますが、実は、これで終わりではないのです……。

そう、このハッカソンと関連して、RESASでは12月20日〆切のアプリコンテストが開催中なのです。

 

opendata.resas-portal.go.jp

 

ということで、僕たち開発チームのSlackチャンネルが解散になるのはまだしばらく後になりそうです。

 

「まだだ、まだ終わらんよ!」

 

 

おまけ

ハッピをつくるRESASハッピソンも同時開催されていました。

ペッパーくんがプレゼンがんばってくれました。

新規事業をはじめます:テーマはEvidence-Based Policy Makingの普及

月末ですね。

あ、今月Blog1記事も書いてないや、と思い出し。

最低月1くらいは記録を残す意味でも更新していきたいところ。

 

実は10月中旬に政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策研究センター専門職ポストに空きが生じたらしいというのを知り応募していたのですが、11月初旬にあいにく不採用通知が届きました。

「副業として会社経営を続ける」というのは前例がないらしく。

いや、それだけが原因かは知らんのですが。

 

しかし、これをきっかけに科学的根拠に基づく政策立案(EBPM:Evidence-Based Policy Making)についてふつふつと興味関心が沸くようになりました。

 

シンクタンク研究員だった頃から定量データに基づく政策立案と評価のサイクルを回すことの重要性は感じていたのですが、日々の業務の中ではなかなか個別に検討したり具体化することは難しく、特に新たな取組やムーブメントを起こすことは叶いませんでした。

 

しかし、今なら事業としてEBPMに取り組むこともできるかもしれないなあ、と思い、ここ1カ月ほど新規事業としてプランを考えておりました。

当初は、行政内に眠っている資料を掘り起こして、「情報を使えるデータに加工してアーカイヴ化する」という事業を考えておったのですが、市役所の友人数名に話を聞くと、それはなかなかハードル高めとのこと。

で、まずはすでに公表されている統計ベースでもよいので、地域経済のデータだけでも整理して提供する、といったプランがよいのでは、という話に落ち着きつつあります。

 

というわけで、その事業企画を取りまとめ、ついでにメインバンクの静岡銀行さんからお声掛けいただいたので、「しずぎん起業家大賞」というビジネスコンテストに応募してみました。

 

第6回しずぎん起業家大賞|静岡銀行

 

ただ、スケジュールを見ると受賞発表が来年3月と大変気の長い話であるのと、受賞しようがしまいがいずれにせよプロダクト開発とマーケットリサーチはする必要があるので、粛々と進めていく予定です。

 

もう2017年もおわりではありますが、年内にプロダクトのβ版は作り上げたいと思います。

 

今年初めに立てた2017年計画の目標はもうびっくりするくらい達成できていないというか御破算になっちゃったものばかりなのですが、この1月で今回の新規事業のプロダクト開発までできたら、まあまあよい1年だった、として締め括ってよいのではないでしょうか。

 
todayuya.hateblo.jp

 

そして、日本茶事業、日本語オンラインレッスン事業と起業して2年半で颯爽と2つの事業をこかしてきたので、三度目の正直として今回の事業は成功させたい、とわりと本気で考えております。

 

応援どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

起業するとは経営者としての人生を選択するということである

他人の失敗から学びなさい。あなたがすべての失敗を経験できるほど人生は長くないのだから。

−エレノアルーズベルト

 

和波俊久『ビジネスモデル症候群 なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?』(技術評論社,2017)を読んだ。

 

本書の要点は以下の通り。

  • バイアスのかかった仮説検証、直感に依拠したアイデア、経営の度外視、手段の目的化、失敗のループといった"ビジネスモデル症候群"にかかることで、多くの起業家が失敗している
  • 起業を成功させるための第一要因はビジネスモデルではない
  • ビジネスモデル崇拝から脱却し、「経営」と「人生選択」という起業の本質に立ち返る必要がある

 

自分自身、創業して2年と少しになる起業家(一応)だが、本書の言う失敗のループにまさに嵌っている。

これまでの2年間に日本茶Eコマース、日本語オンラインレッスンという2つの自社事業を立ち上げているが、いずれも成功したとは言い難い状況で頓挫した。

 

どうしてもビジネスモデルをその原因だと決めつけ、また新しいビジネスモデルのアイデアを創らないと……という考えに囚われていたが、必ずしもそれだけではないのかもしれないな、とその考えを改めることができた。

むしろ本書の「起業とは経営を続けることである」という観点から言えば、生き残ってはいるわけなので、まだ失敗したとは言わなくてよいのかもしれない。

 

筆者は「起業家の1年目の仕事とは、『やりたいこと・できること・求められることの3つを一致させるための仕組み』を構築することだ」(p.178)と述べている。

すでに3年目で未だにこれらができていないのは甚だ問題だが、こうした仕組みを構築し、失敗のループから抜けられるよう起業家としてのReスタートを切りたい所存である。

立命館大学「まちづくりと産業」講義:一人ひとりの事業が地域を変える

昨日6月20日、立命館大学の「まちづくりと産業」という授業にてゲスト講義をさせていただきました。

 

同授業でのお話させていただくのももう4年目になります。

毎年ブラッシュアップはしてきたのですが、今年はお話する内容をわりと大きく変更しました。

例年は「産業連関表」という統計資料を解説しながら、地域経済分析の方法について紹介してきたのですが、学生のみなさんからの「むずかしい」という声がたくさんあったので、今年は内閣府経産省の提供する地域経済分析システム「RESAS」を使うことにしました。

 

resas.go.jp

 

RESASは、統計資料を扱ったことがない方でも簡単に産業構造や人口動態などに関する幅広いデータを確認してビジュアル化できるシステムです。

この判断が功を奏したのか、例年より「むずかしかった」「わからんかった」という声は減り、「自分でもRESASを見てみようと思う」「今度レポートを書く時に使ってみたい」などの嬉しい感想が見られました。

 

前半はこうした地域経済分析について紹介し、後半はここ2年間の自分の創業経験をベースに、「地域で事業に取り組むこと」についてざっくばらんにお話しました。

成功体験よりも失敗談を主に話したので、起業やビジネスについて少しでも身近に感じてもらえれば幸いかな、と。

 

当日の講義資料は以下の通り公開しておりますので、ご関心おありの方はぜひご覧ください。

 

めざす未来のための仕事をしよう(2016/10/19 掛川西高校社会人講演概要)

2016年10月19日、静岡県立掛川西高等学校にて、1年生を対象とした社会人講話を行った。

実施目的は「第一線で活躍する社会人から、仕事の内容や難しさ、やりがい等について学ぶことを通して、「働く」「生きる」ことについて理解を深める。また、職業についての適性や職業に就くまでのルートについて知り、生徒個々の進路選択の一助とする」とのこと。

時間は講義40分・質疑応答20分。講師陣は公務員、税理士、消防士、建築士etc...さまざまな職業から16名が集められ、生徒さんは自分の関心のある講師の話を聴くというもの。戸田は「会社経営者」という枠での担当。来場者は約40名。

講演資料は以下の通り。 

 

以下、講演内容の概略を記述する。

0.自己紹介(略歴)

静岡県立掛川東高等学校を卒業し(なので西高OBではない)、その後1年浪人して筑波大学へ入学した。同大では教育学を主に学んだ。

大学卒業後は三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社、大阪市役所や京都市役所、沖縄県庁などの地方自治体や、経済産業省厚生労働省などの中央省庁からの受託調査業務に取り組んだ。

丸5年大阪にて同社に勤めた後、2015年に掛川へ戻り、起業した。現在は日本茶通販・輸出事業、中小企業向けWEB制作事業、行政の計画策定支援事業などを同時に走らせている。また、日本語オンラインレッスン事業の立ち上げ準備中である。

 

1.人生の仕事と目標

人生の目標

そもそもなぜこうした仕事をしているのかを説明するために、自身の人生の目標について話したい。

それは「人種、国籍、出身にかかわらず、誰もが活躍できる社会をつくる」ことである。特にその中でも、短期的には日本における外国人に着目し、外国人が日本社会で活躍しやすい環境を整えることをめざして仕事に取り組んでいる。

目標と仕事

この目標と仕事にどのような関係があるか。

主には2つある。

1つはそもそも起業することによって、自らキャッシュを稼ぎ、カネを生み出すことで社会に対する影響力を持つこと。

カネは力であり、大きな金額を動かすことができれば、それはそのまま社会を動かす力になる。まだまだ零細企業もいいところだが、当面は大きく稼ぐことを目標に仕事をしていきたい。

そしてもう1つは、事業そのものを通じて、日本社会で外国人が活躍するモデルケースをつくっていくことだ。

その一環として、日本茶の輸出に取り組んでいる。メイド・イン・ジャパンの製品を海外にセールスする際、日本で言語や文化を学んだ外国人は、その母国での営業活動で大きな力を発揮するだろう。日本茶の輸出を上手く展開し、日本で学んだ留学生をはじめとした外国人材の活躍の場をつくりたい。

また、現在準備中の日本語オンラインレッスン事業についても、海外で日本語を学んでもらうだけでなく、国内の外国人留学生や労働者の方に、低コストで自由な時間帯に日本語を学べる環境を提供し、留学生の日本企業就職を促進していきたい。

目標と仕事(ビジネス以外)

ビジネス、事業以外の面でも目標実現に向けた仕事をしている。

主には、一般財団法人未来を創る財団
「定住外国人政策研究会」プロジェクトメンバーとして、日本の移民政策に関する提言活動を行う、
掛川市多文化共生社会推進協議会委員として地域の多文化共生の推進を図る、などである。

また、学会での研究報告や一部コラムの執筆なども行っている。

僕は報酬の発生するものだけを「仕事」とは捉えていない。「仕事」とはより広義なものであり、世の中に対する働きかけ全般を指すものであると考えている。

だから、こうしたビジネス以外の活動も僕にとっては仕事であり、目標の実現に向けて重要な位置付けを占めている。

 

2.人生の転換点

大学時代:難民との出会い

では、なぜこのように外国人の問題に関心を持ち、その課題解決に取り組むようになったのか。

金城一紀作品の影響や、身近に日系ブラジル人の友人が多かったといったこともあるが、最も大きなきっかけとなったのは、大学3年生の夏に野本大監督『バックドロップ クルディスタン』を観たことである。

これはあるクルド難民の家族を描いたドキュメンタリィ映画である。

賛否両論ある映画ではあるが、この映画を観て私は日本にも難民がいるということを初めて知り、これをきっかけとして、この問題に強く関心を持った。

その後、牛久入管収容所問題を考える会(通称:牛久の会)に参加し、東日本入国管理センターに入所する難民申請者との面会活動に加わった。

ここで難民申請者と実際に話をしたことで問題意識を強め、歴史的経緯や法制度上の位置付けを学ぶために難民支援協会が開催していた「難民アシスタント養成講座」を受講する。

そして、卒業研究として「在日ビルマ難民における民族間関係の変容」をテーマとした論文を書いた。

研究員時代:外国人が活躍しやすい社会の構築に向けて

卒業研究に取り組み始めたころ、大学4年生になり、就職活動が始まった。

外国人政策に関する仕事をしたいと考えた僕はシンクタンク研究員になるか、新聞記者になってから政治家を目指すルートの2つを検討し、結局前者を選択した。

入社当初は外国人政策に関する仕事は全くなく、主に地域経済分析、産業振興計画策定支援の仕事をしていた。ここで仕事のいろはを教わりつつ、しかしなかなか待っていても外国人政策の仕事がなかったので、入社3年目から積極的に案件開拓に取り組んだ。

業務としては「堺市国際化推進プラン改訂支援業務」を受託したり、自主研究として市町村の外国人政策に関するアンケート調査を実施したり、自社事業として「留学生の活躍する未来」をテーマとしたシンポジウムを企画・開催したりしてきた。

さらに2014年には横断的組織として社内に「外国人活躍推進室」を設置し、
外国人関連分野の人材・知見の見える化を進めた。

こうした活動を通じて、会社から多大なサポートを受けながら、一研究員として外国人政策に関わる活動を展開してきた(シンクタンク研究員時代について詳しくは以下の記事参照)。

todayuya.hateblo.jp

起業のきっかけ

こうした活動に取り組みながらも、一会社員としての限界を感じ始めたのが入社4年目の頃。営利組織である以上、当然外国人政策分野以外の仕事も多々発生するし、また外国人政策分野がしっかり利益が出る分野であることを社内に説明し続ける必要があった。

当然社内からもたくさんの応援をいただいていたので、そのままシンクタンク研究員としてより様々な取組を展開していくこともできたのだが、2014年夏に起業を決意した。

これには自分の力試しをしてみたいという気持ちもあり、また前述の通り、自分の会社でキャッシュをがっつり稼いで、外国人政策により積極的に関与していこうという心積もりがあったためである。

また、この決定に大きな影響を与えられた作品として至道流星羽月莉音の帝国』がある。

www.shogakukan.co.jp

簡単に言えばヒロイン率いる高校生たちが革命部という部活をつくって世界に革命を起こす話なのだが、当時そのスケールの大きさとスピード感に衝撃を受けた。例を挙げると第1巻で事業立ち上げから事業売却、その資金を使って東証二部上場企業を買収するところまで話が進む。

同書を読むことで「世界を変えるならやはり自分で事業を起こすしかないのではないか」という思いがふつふつと湧き、勢い余って起業してしまったとも言える。

そして起業して1年4ヶ月…現在に至る。

もちろん物語のように上手くいくようなことはないのだが、アプローチの仕方は変わりながらも、「人種、国籍、出身にかかわらず、誰もが活躍できる社会をつくる」という目標に向けて動き続けることはこの10年ほど、ほとんど変わらない。

そしてこれからも、この未来像の実現に向けて生きていくつもりである。

 

3.未来をつくる君たちへ

あなたはどんな未来がほしい?

さて、ここまで、僕の人生にどのような転換点があり、どこをめざして仕事をしているのかを話してきた。

ここからは君たちの話だ。

機械になくて人間にあるもの

君たちが生きる未来について少しイメージしてほしい。

15年前、僕が高校生だった頃と比べても、インターネットは圧倒的に普及し、君たちを含む誰もがスマートフォンを手にし、さまざまなアプリケーションが僕たちの生活を手助けしてくれている。

これからはAIもますます開発が進み、僕たちに代わって機械がたくさんの仕事をしてくれるようになるだろう。

それはいわゆるホワイトカラーと呼ばれる事務系の仕事でこそ劇的に進んでいくかもしれない。例えば投資会社において、投資判断はすでに機械の仕事となっている。さまざまな事務処理も便利なソフトが開発されて、経費処理なども人の手を離れている。

こうした中で、機械にはできなくて、人間にしかできないことというのはなんだろうか。

それが、ここまで話してきたような「社会をこうしたい」「こんな仕事がしたい」「これが好きだ」という意思であり、モチベーションであると思う。

これからは「自分はこうしたい」という意思のない人は、機械を使うのではなく、機械に使われるという時代が訪れる。

もちろん機械に使われて働くということが悪いというわけではなく、それはそれで一つの生き方ではある。しかし、主体的に人生を生きていくのであれば、ぜひ自分がどうしたいのか、どう生きていきたいのか、この人生で何を成し遂げたいか、を考えてみてほしい。

能力や才能のことは一旦忘れてよい。それはきっと周りの人間や機械に助けてもらうことができる。なによりもまず、君の意思が最も大切になる。

広い世界を見る

そうは言っても現時点でしたいことも、なりたいものもないよ、という人もたくさんいると思う。というか、15歳ならない方が普通かもしれない。

だからこそ、そういった人は(もちろんなりたいものがある人も)ぜひ広い世界を見るということを心がけてほしい。

高校生である限り、家と学校を往復する日々があり、日常的に接するのは家族、学校の先生、学校の友人だけになってしまう。

しかし、今日僕がここで話しているように本当は身近に多種多様な大人たちがいるのだ。ぜひ学校の外に出て、いろいろな大人たちと出会ってほしい。

そして、ぜひ大きな書店に行き、いつもは覗かない本棚を眺めてみてほしい。あらゆるテーマについて、多くの人々が物語っていることがわかると思う。そして何かアンテナに引っかかるものがあればぜひ手にとってみて欲しい。

広い世界を見ろ、と言われてもいきなり来週からアフリカに旅立つことは難しいと思う。しかし、本屋は一部とは言え世界を内包した場所である。ぜひ本屋という世界に旅立ってほしい。

ノブレス・オブリージュ

ノブレス・オブリージュ」という言葉を知っているだろうか。

「高貴なる者の義務」といった意味だ。

君たちは日本に生まれ、掛川西高校という市内随一の進学校に通っている。そしておそらく県内外の優秀な大学に進学していくだろう。

もちろんそれぞれの事情はあると思うが、グローバル基準で言えば、もうこの時点で相当恵まれた、ラッキィな環境にいる、という位置付けになる。

妙なエリート意識、選民意識を持て、という意味ではない。ではないが、偶然この国に生まれ、高校に通うことができるという立場を享受していることを踏まえて、ぜひ少しだけ幸運な者の義務ということを心に留めてほしい。

もちろん自分自身や家族、身近な人間の幸せを第一にするべきであるし、それを犠牲にした方がよいということではない。

しかし、将来君たちが職業選択をするときに、ほんのちょっと自分の利益だけを追求するのではなく、自分に与えられた才能、能力を社会にどう還元するか、ということを考慮してみてほしい。

人生を賭けるに足るもの

広い世界を見て、自分のしたいこと・解決したい痛みを見つけ、社会に貢献する意思を持って、仕事をしてほしい。

それが今日君たちに伝えたかったことだ。もちろんこれが誰にでもできることとは思わないが、今日この教室に集まってくれた君たちならば不可能ではないと思う。

生き方次第ではあるが、仕事をする時間は、人生の中で最も長い時間になる可能性がある。そのため、どのような仕事をするか、ということは、どのような人生を送るかに直結する。

だからこそ、どんな仕事をして社会で活躍したいかという意思をぜひ大事に育み、人生を賭けるに足る何かを見つけてほしい。

今日からできること

その何かを見つけるために、たくさんの本を読み、気になることがあればインターネットを活用して情報を集め、夏休みには旅に出て、たくさんの人と出会ってほしい。

 

4.おわりに

今日はありがとう。僕もまだまだ駆け出しの起業家であり、発展途上、道半ばだ。

僕は僕のめざす未来のためにこれからもがんばりたいと思う。

ぜひ君たちも君たちめざす未来を考え、その実現のためにがんばってほしい。

君たちが30歳になる頃、僕は45歳、まだまだ現役で仕事をしている。

もし縁があれば、ぜひ一緒にいい仕事をして、いい未来をつくろう。